パークホテル東京が展開する「アーティストルーム」は、日本文化や美意識を世界へ発信する取 り組みの一つです。客室の壁や天井にアーティストが直接描き、空間そのものを作品として完成 させます。今回は、障害のあるアーティストを支援するパラリンアートに登録し、独創的で色鮮 やかな世界観のアーティストルーム「玉手箱」を制作したおおはしみさ氏へのインタビューを通 じて、龍や虎、亀など日本文化を想起させるモチーフに込めた想いと、その創作の背景をご紹介 します。
Q1:これまでのご経歴と、アートを始められたきっかけを教えてください。
幼い頃から絵を描くことが好きで、家の壁や机の下に夢中で絵を描くような子どもでした。大学ではデッサンや油絵、水彩画などを学びましたが、課題制作が中心で、自由に表現できないもどかしさも感じていました。
転機となったのは、教授から「一生涯追求できるものは何か」と問いかけられたことです。それをきっかけに、自分自身と向き合う作品制作を始め、悩みや不安といった目に見えない感情を表現するようになりました。同じような気持ちを抱える方に作品が届き、共感していただけたことが大きな喜びでした。
言葉では伝えきれないことも、絵だからこそ伝えられる。その魅力を実感しながら制作を続けています。
Q2:普段の制作で大切にしていることは何ですか?
一番大切にしているのは、「自分自身が楽しいと思えること」です。誰かに評価されるためではなく、自分が心から「大好き」と思える作品を描くようにしています。最近は、あえて左手で絵を描くことにも挑戦しています。右手だと「上手に描かなければ」と意識してしまいますが、左手なら余計なプレッシャーを感じず自由に描けます。足でクレヨンを挟んで描いたこともあり、とても楽しかったですね。
普段は自宅とアトリエを行き来しながら制作しています。画材は子どもの頃から親しんできたアクリル絵の具が好きで、色彩の美しさと自由な表現ができる点に魅力を感じています。

Q3: おおはしさんにとって「絵で表現すること」について教えてください。
絵を描くことは、何よりも楽しいです。制作中は考え込みすぎず、自由に描くことを大切にしています。途中で「完成できないかもしれない」と不安になることもありますが、描き上がった瞬間の達成感は何度味わっても特別です。私は言葉で表現するのが得意ではありませんが、その分、絵だからこそ伝えられるものがあると思っています。作品を通して何かを感じていただけることが、一番嬉しいです。
今後の目標は、世界に通用するアーティストになることです。そして、絵を描いて得た収入で家を建てることも夢の一つです。これからも自分らしい表現を追求しながら、多くの方に作品を届けていきたいと思っています。
Q4: アーティストルーム「玉手箱」の制作では、どのようなことに挑戦されましたか?
ホテルの客室全体をひとつの作品として描くアーティストルームの制作は、普段のキャンバス作品とは異なる挑戦でした。パークホテル東京にはさまざまなアーティストの作品が展示されているので、それらから刺激を受けながら、自分が普段はあまり使わない表現にも挑戦しました。例えば、リアルな描写とイラストのような表現を組み合わせたり、幻想的な空間の中に江戸時代の街並みを描いたりしています。
また、この作品では「日本らしさ」を表現したいという思いがありました。日本画や浮世絵を思わせる要素を取り入れながら表現を広げ、日本らしさを感じてもらえるモチーフを自然な形で作品の中に描いていきました。

Q5: 「玉手箱」に込めたストーリーを教えてください。
この客室のテーマは「玉手箱」です。玉手箱を開いたときに立ちのぼる煙をイメージしたことから、煙から連想した龍を作品の中心に描きました。虎はもともと好きなモチーフで、その力強い模様や美しさに魅力を感じています。また、亀は竜宮城をイメージしており、玉手箱、龍、虎、亀がひとつの物語としてつながることで、日本らしい世界観を表現しました。日本画を思わせる表現も取り入れながら、日本の文化や美意識を感じられる空間を目指しています。客室内には、かき氷のようでありながら富士山にも見えるモチーフも描いています。制作中は細かく設計するというよりも、描きながら発想を広げていくことを大切にしました。玉手箱から次々と宝物が現れるように、新しいアイデアやモチーフが自然と生まれ、この空間ならではの世界観へとつながっていったと思います。
Q6: パークホテル東京での滞在制作はいかがでしたか?
今回の作品は約 7 か月にわたって制作しましたが、その間はパークホテル東京に滞在しながら制作を進めることができました。ホテルで作品と向き合う時間はとても貴重で、制作に集中できる環境だったと思います。
作品完成後には、自分が描いた客室に宿泊する機会もありました。しかし、部屋全体がとてもカラフルで、自分の作品に囲まれていることもあって、あまり眠れませんでした(笑)。
完成した空間で過ごすことで、制作中とは違った視点で作品を感じることができました。約 7 か月の制作期間を含め、ホテルで過ごした時間は私にとって特別な思い出となっています。

Q7:この部屋を訪れるゲストへメッセージをお願いします。
このお部屋に宿泊される皆さまには、子どもの頃の気持ちに戻って楽しんでいただけたら嬉しいです。龍や虎、亀、富士山などさまざまなモチーフを描いていますが、自由に眺めながら、ご自身なりの発見や物語を見つけていただければと思います。
「玉手箱」というテーマの通り、この空間には想像力を広げるきっかけをたくさん散りばめています。日本のお客様にも海外のお客様にも、滞在そのものを特別な体験として楽しんでいただき、少しでもワクワクした気持ちを持ち帰っていただけたら嬉しいです。
協力:パラリンアート運営事務局
