「江戸-東京」をテーマに、美術作家のふるかはひでたかさんが2016年1月8日から制作をスタート、ホテルに滞在しながら約2ヶ月半制作を続け、2016年3月29日に完成いたしました。
「この部屋に滞在することで、現代的な景色の背後に流れるこの街の歴史を、少しでも意識する切っ掛けとなってもらえたら」という、ふるかはさん。制作したのは、2016年の東京の景色と重なるように、江戸の風景が描かれたお部屋です。スカイツリー、東京タワー、日本橋といった東京のランドマークを遠景に、近景には歌川広重が描いた浮世絵から引用して、同じ場所の名所絵が重ねて描かれました。変わり行く街並みと、季節が巡っても変わらずに咲く花。部屋の随所に描かれた桜、紫陽花、朝顔、菊、山茶花がお部屋を彩ります。
アーティストルーム「江戸-東京」では、江戸と東京の重なる景観を眺めながら、一世紀半のときを超えた時間旅行をゆっくりお楽しみいただけます。
スタッフからのおすすめコメント
現代の東京と古代の東京の両方の写真を楽しむことができる部屋を想像してみてください。それが、アーティストルーム「江戸-東京」です。
アーティストのふるかはひでたか氏は、現代の東京を壁にリアルに描き、それに日本の伝統的な浮世絵のスタイルからインスピレーションを得た絵画や物語を巧みに取り入れています。私のお気に入りのシーンは、スカイツリーや金色のオブジェがまるで写真のように見える浅草のスカイラインで、その下を流れる隅田川には17世紀の日本の伝統的な建物や日常の風景が描かれています。この部屋では、クローゼットの外には鮮やかな花の絵、壁には作者が描いた美味しそうな和食の絵が描かれており、ベッドの近くには「江戸」と「東京」と書かれた紙製のランプが2つ置かれています。他にも、押入れの中や天井にある隠し絵を探してみてください!
「江戸-東京」はシングルルームなので、一人旅で古き良きものと現代的なものに囲まれた居心地の良い空間で、本物の日本のおもてなしを体験したいという方に最適です。
Room #3111 | 完成:2016.03
「江戸」とは東京の古い呼び名。そして日本の近世における時代区分の名でもあります。 1868年以前、この街には武家政府があり、日本もまだ西洋型の近代国家へ舵を切っていませんでした。歌舞伎や浮世絵など町人文化が形成され隆盛したのは、この時期この街を舞台としたものです。また、寿司や蕎麦など現在見られる日本食の多くも、同様にその頃ここで今のスタイルが確立しました。 こうして、お皿の上などには面影を残す「江戸」ですが、街の風景はすっかり変わり、当時の名残りを探すのは難しいものです。ともするとここに暮らす日本人ですら、江戸の人々と同じ土地に暮らすことを忘れがちです。
部屋の天井に記した方位マークは、江戸期の地図から引用したものです。これはそのまま、この部屋の方角を表しています。今回、僕は「江戸‐東京」のテーマのもと、この部屋に東京の3つのランドマークを描きました。スカイツリー、東京タワー、日本橋。ランドマークはこの部屋からみて、それぞれ描かれた壁の向く方角にあるものです。
絵の近景には浮世絵から図像を引用しました。江戸後期に活躍した錦絵の巨匠、広重の描いた名所絵から、同じ場所、同じアングルより描いたものを選んで重ねてみました。江戸と東京。160年を隔てたふたつの景色はまったく別の場所のようで驚かされます。
どうぞこの部屋では、江戸と東京の重なる景観を眺めながら、一世紀半のときを超えた時間旅行をゆっくりお楽しみください。また、この部屋での滞在がお客様にとって、現代的な景色の背後に流れるこの街の歴史を、少しでも意識する切っ掛けとなるのでしたら、それに優る幸いはありません。
ふるかはひでたか
道具、日記、生物学、音楽など、さまざまな事柄を題材に、特定のスタイルに固執することなく、常に多様な素材を用いて表現しています。
近年は特に、土地を題材に「CULTIVATE」と名づけたシリーズを展開。歴史資料やフィールドワークから各地の個性を焙り出したり、忘れ去られた人物や出来事にスポットを当てる制作が活動のひとつの柱となっている。コンセプチュアルな立体作品を多く手掛けるが、和洋のスタイルを自在に操る平面作品も注目される。