31室目は「縁」をテーマに、テキスタイルアーティストの小林万里子さんが2017年6月23日から制作をスタート、ホテルに滞在したり通ったりしながら約3週間制作を続け、2017年7月18日に完成いたしました。
「縁」という繋がりを表す言葉をテーマに選んだ小林さん。自分の意志や選択を超えて、あらゆる物事との縁の糸は紡がれ、繋がり、世界は広がる。目には見えないけれど日本人の中に存在する「縁」を赤い糸で可視化、これまで出逢ってきたもの、そしてこれから出逢うものとの縁を、自然や生き物と共に表現しました。
日本との縁、この部屋との縁、これから出逢う全てのご縁が良い物としてあなたに結ばれますように、という作家の思いが込められたお部屋です。
スタッフからのおすすめコメント
Room #3101 | 完成:2017.07
まだ世の中に物と情報が溢れる前の時代、「自然におけるあらゆるものが自分たちと関係がある」という受容的な感覚が日本人にはありました。
日本には八万とも十万とも言われる数の神社があり、八百万の神様が祭られています。
自然に対して畏敬の念を持ち、対立するのではなく近づこうとすることが日本人にとっての美意識であり、そんな暮らしの中から「縁」という見えない繋がりに対する祈りや願いが生まれたのかもしれません。
全ての巡り合わせには、自分の意思や選択を超えた「超自然の意思」がこっそりと関係していて、縁の糸を繋いだり切り離したりしてどこかへ導こうとしてくれていると感じる瞬間があります。
いま私達は時代の変化の中で、関係し合い存在しているということを忘れてしまっているのではないかと思います。
私達はこれまで出会ってきた全てのものと繋がっていて、これから出会う全てのものと繋がりながら世界を広げていきます。
日本との縁、この部屋との縁、これから出逢う全てのご縁が良い物としてあなたに結ばれますように。
小林万里子
1987年大阪生まれ。
多摩美術大学大学院テキスタイルデザイン修了。幼少期に様々な生き物たちの生命の営みに触れ、自然環境や動物保護への関心が芽生える。近年ますます人工化が進む私達の生活の中で、アートを手段に希薄になりつつある生き物との関係を示していく活動を行っている。素材を壊しまた縫い合わせる、書いたものを塗り潰しまた描くという、色と素材の重なり合う表現が魅力のひとつ。 現在は、より多くの人に伝えることの出来る公共施設等の場所での大型のアートワークを精力的に手がけている。