「部屋から見る無数のビル群が時間や季節の移ろいとともに表情を変え、一瞬も同じ風景がないことにインスパイアされた」という山田さん。この部屋に描かれたのは、大阪・金剛寺の≪日月山水図屏風≫をモチーフとした、時間の流れとともに変化し、おぼろに光る山水画です。※注1
遠くから見れば山の稜線が見える壁に、近づいてみれば無数の動物たちが住む。昼の光に照らされて桜が見える春の壁があれば、夕方の光で紅葉に染まる秋の壁がある。夜の松林は冷たく光る雪で覆われ、朝の夏の光はどこまでも眩しい。
山と海、昼と夜、そして春夏秋冬が収められた一隻の屏風のように美しい部屋。 「アーティストルーム 山水」で、壁の作品とともにごゆっくりとお過ごしください。
注1:下地を塗った壁に鉛筆で作画した後、様々な色で部分的にコーティングすることに より、光の加減で見え方の異なる壁を作り上げました。
スタッフおすすめコメント
このアーティストルームでは、部屋の中に描かれた細かな自然の風景と、東京の都会的な風景の両方を同時に楽しむことができます。アーティストルーム クイーン 山水は、落ち着いた雰囲気の中でアートや美しい風景を鑑賞したい方に最適の部屋です。わたしがこの部屋で最初に感じたのは、細部の存在感です。一見すると壁に描かれた白黒のラフな絵にしか見えないのですが、近づいてみると、驚くほどたくさんの草木が描かれているだけでなく、とても可愛くてフレンドリーな動物たちが部屋中に描かれているのです。壁に描かれている植物や動物を探すのは、とても楽しいものです!アーティストの山田 純嗣氏は、部屋から見える無数の建物からインスピレーションを得て、鉛筆によるグレー、黒、白で細かな風景を壁に表現しました。
アーティストルーム クイーン 山水は、シンプルで落ち着いた空間と、内外の息を呑むような景色を楽しみたいアート好きの方にオススメです!
Room #3109 | 完成:2015.03
この部屋から望む東京の無数のビル群は、そのディテール一つ一つに密度があり、じっくり眺めていると、そこに人々の営みを感じるうえに、時間や季節の移ろいとともに表情も変え、一瞬も同じ風景がないことに、つい時間を忘れて見とれてしまいます。このことが私にインスピレーションを与えました。
中国に始まる東洋画の一部門である山水画は、普遍的な自然の姿を描いたものです。今回、山水をテーマにこの部屋に描いたのは、大阪の金剛寺にある《日月山水図屏風》をモチーフとしたものです。《日月山水図屏風》は、日本固有のやまと絵形式で描かれた風景画ですが、特定の場所を描いたものではなく、画家の胸中に浮かぶ日本の風景——神々の宿りとしての山や森、滝、海原を、昼と夜、四季とともに一双の屏風に収めたものです。折り目のある屏風は、縁側の横から入る自然の光や、夜の蝋燭の光に照らされ、自然と一体になって豊かな表情を見せたことでしょう。このことを手がかりに、窓の外の豊かな風景と一体となって呼応する様な作品をめざし、全体と細部の表情の違いや、時間による見え方の変化にこだわって描きました。
山田 純嗣
1974年長野県生まれ。
1999年愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了。途方もなく時間のかかる制作プロセスを得て完成させる作品で、「絵画とは何か?」について考察する現代アーティスト。代表作は、「貴婦人と一角獣」(東京ステーションギャラリー蔵)、ボッス「快楽の園」(愛知県立美術館蔵)、モネ「睡蓮」、雪舟「秋冬山水図」などの名画(二次元)を、まず立体(三次元)にして元の名画と同じ構図(ジオラマ)にして撮影、撮影した写真(二次元)上にマチエールとして銅板を刷り樹脂を施して完成させるという<絵画をめぐって>シリーズを展開している。