墨色は、日本の伝統文化の中で極めて重要な色と言えます。
墨とは、油煙や松の根を燃やして出た煤(すす)を膠(にかわ)で練り固めたものです。それを水と硯ですってできた色が墨色となります。
古くから黒い色を着色する際に最も多く使用され、数千年という年月にも耐える記録材料とてして、歴史を語り伝える際の大きな役割をもっています。
また墨は、インクとしてだけではなく、絵画では水墨画、工芸では漆にも用いられ、そして書として、文字を芸術にまで高めた、この国には欠かせない材料です。
特に、日本の芸術はこの墨の明暗で色を表現することを好みます。
アトリウムでは『春色の墨』と題して現代作家の展覧会を開催致します。
墨で日本の春を感じて頂ければ幸いです。
期間: 2012年3月26日(月) ~ 5月26日(土)
時間: 11:30 a.m. ~ 10:00 p.m.
場所: 25F Atrium
料金: 無料
[協力]羽黒洞
[総合プロデュース]creative unit moon
[映像制作]antymark
阿部 清子(あべ・きよこ) | 亀井 三千代 (かめい・みちよ) | 木村 浩之 (きむら・ひろゆき) | 生井 巌(なまい・いわお) | 日置 路花(ひおき・ろか) | 平澤 重信(ひらさわ・じゅうしん) | 野村 清六(のむら・せいろく)
1970年東京生まれ 画家
現代人の心模様をモチーフに、主に墨を使用した人物画を描いています。
今展のための新作『時は来た』の女性には、色々大変な今こそ、春の初心と未来への気概を持ちたい、という思いが込められています。
このようにそれぞれの作品にメッセージのある作品を制作する、今大変注目されている作家です。
1966年東京生まれ 画家
東京医科歯科大学にて解剖学を学び、そこから得た知識と、自身の中に生じた様々な想い、疑問と解釈、思想から生まれた結晶のような作品です。
具体的なモチーフに、自身の創造を重ねて独自の世界を創り出します。
それは、墨、岩絵の具による無数の繊細な線と、大胆な色面によって構成され描き出された、不可思議な心象風景です。
1975年東京生まれ 画家
多摩美術大学卒業。とにかく相撲が好きで、力士を描くために週に何度も稽古場に足を運び、各場所中も朝から土俵際に座り、墨や鉛筆でスケッチをしています。
本人も相撲をとり、得意料理はちゃんこ鍋。スポーツとしてではなく、神技、国技としての精神性の高さに魅力を感じているようです。
「相撲は土俵の中で闘い、一日に何百番と取り組みがあるが、一つとして同じ取り組みはない。 土俵という限られた場であるが、その中に無限の闘いがある。一番一番をよく見ると、その中に人生や、感情が見えて面白い。 土俵の中にある無限を画面に表すこと。絵画もまた、画面という限られた場に、無限の想いを表すことだと思う。芸術は有限の中に無限を込めていく事だと思うのです。
私は、力士たちの精神を伴った肉体がもつ輝きを画面に表したい。人々を圧倒する力を持つ、異形の輝きを。」(木村浩之)
1941年東京生まれ 画家
主に墨を使用し、春夏秋冬、自然にそって身の回りものをひたすら描く。
描くだけでなく、花や実をつみ、観て、遊び、食べる。
素直に、じっくり向き合うと、何か必ず発見がある、そして、ありのままを描くというのがこの画家の考え方。
この作品は、所沢市の薬王寺にある二本の公孫樹。直接墨でかくのは大変難しいにも関らず、
現場に座りこみ、冬から春の3ヶ月かけて、芽吹く頃を描きあげたものです。
1936年東京生まれ 書家
主に日本や中国の古典、または中世から現代の歌や句などから主題を探し、力みのない文字の域を超えた書を制作しています。大きな作品からは想像がつかないほど大変小柄な女性です。
「心花自在」は、江戸前期の僧、円空の書いた経の一部(出典は不明)。
花は自然に咲く。心の花は自然よりももっと自由に咲くことができる、作家はこの経を「自由、より自由」と解釈をしているようです。
1948年 長崎生まれ 画家
自由美術協会会員。普段は油絵を多く描いていますが、この作品は墨で描かれています。
独特の詩的世界をもち、人や動物・乗物といった日常的なモチーフを自由に組み合わせて、
独自のバランスで構成されたその空間は、それぞれのイメージがいきいきと響きあって、どこか懐かしい不思議な物語を紡ぎ出しています。
この作品には蟷螂、蝶、猫、鳥、建物、人、影…?? 何か描いてあるのか、観る側の想像を膨らませる作品です。
1916年 山梨県生まれ 画家
幼少のころ、冬の凍った富士をみて美意識を感じ、長年に渡り、水墨画の修行をしました。
山里にアトリエを構え、主流に属することを嫌い、広々とした野山、大きな空、ゆったりと流れる河など大きな世界を好み、
自分の好きなものだけを一貫し描き続けました。
若いころより俳句にも興味があり、日本的デフォルメのきいた大胆な画風が特徴です。
1995年 死去 (享年79歳)