第25弾 三橋 鎌幽

「侍」をテーマに、鎌倉彫師の三橋鎌幽さんが2016年7月1日から制作をスタート、ホテルに滞在したり、通ったりしながら1月間制作を続け、2016年8月1日に完成いたしました。

「侍の生きた時代から継承されている鎌倉彫の技を通し、侍に想いを馳せると共に、日本の美意識にも想いを巡らせて欲しい」という三橋さん。伝統の技を現代に生きるカタチで世に放ちたいと、侍の部屋の制作に臨みました。侍とゆかりの深い「鎌倉」の地で発祥し、800年間受け継がれる「鎌倉彫」。木を彫刻し、漆を塗り重ねる日本固有の伝統技法を用いる鎌倉彫で、お部屋全体を装飾しました。アーティストルームでは初めてとなる、美しい日本の伝統工芸で装飾されたお部屋です。

ベッドの上、左右に飾られたのは、寄木のように32のパーツからなる侍の形をした鎌倉彫。その彫刻は繊細で、丁寧に重ねて塗られた漆の艶が美しい作品です。中央に設置された「刀」は、師である三橋鎌嶺が制作したもの。これは侍の「心技体」が師から弟子に継承されることを表すと同時に、技の伝承そのものに日本の美意識を感じることができます。反対の壁には、実在する侍の装身具をモチーフに彫った、真田信繁の赤い兜、森蘭丸の黒い兜を飾りました。禅宗寺院に育まれた鎌倉彫の間に書かれたのは、名刀の名の文字からなる「円相」です。また、部屋全体を守護する配置で眼を光らせる獅子の掛け軸と、鳳凰の陣羽織の図柄は、鎌倉彫の図案技術を活用し、再構築して描きました。部屋の入り口にかけられた富士山の図柄の陣羽織は、豊臣秀吉のものです。

アーティストルーム「侍」では、宿泊するお客様が侍となり、時空を超えて侍のプライベート空間を体感いただけます。

 

スタッフからのおすすめコメント

皆様は「日本」と聞くと、どんなものを想像されますか?
恐らく、侍をイメージされる方も多いことでしょう。海外では、未だに日本に侍が存在していると思われている方が居るほど、日本=SAMURAIのイメージが浸透しています。残念ながら現代の日本で侍に会うことは叶いませんが、当ホテルのアーティストルーム「侍」では、自分自身が侍になったかのような雰囲気を味わうことができます。作家の三橋さんによるとこの部屋には、「時空を超えて侍のプライベート空間を体感して欲しい」という思いが込められており、日本の伝統工芸品である掛け軸、羽織、日本刀などを部屋の装飾のモチーフとして贅沢に使用し、まさに侍の雰囲気を感じさせるデザインが特徴的です。しかし、侍を連想させるものがただ装飾されているわけではありません。日本刀が枕元に置いてあったり羽織が寝床の横に描かれていたりと、敵に襲われても直ぐに戦えるようにと侍目線で考えられた装飾が施されています。侍は眠る時、寝返りを絶対にせず、利き手を守りながら睡眠をとっていたそうです。その理由は、「直ぐに起き上がれるように」「利き手で刀を持てるように」するためだと言われています。もし当時の侍がこの部屋を見たら、寝返りし放題だ!! ときっと驚くことでしょう。外では常に気を張り、家では頼りになる存在として強くいなければならなかった侍の生き方は、現代人の生き方と似ている部分もあるように感じさせてくれますね。是非このお部屋にご宿泊の際は、侍のエネルギーや強さを感じながら現代を生きる侍として約130年前の侍の生活を感じてみてください。

Room #3118  |  完成:2016.08

Artist’s Message

「侍の部屋」

侍の聖地「鎌倉」、その地で発祥し800年間受け継がれる「鎌倉彫」。木を彫刻し、漆を塗り重ねる日本固有の伝統技法を用いています。鎌倉彫職人である私にしか表現できない「侍」を模索しました。
「侍の部屋」をコンセプトとし、宿泊するお客様が侍となり、時空を超えて侍のプライベート空間を体感して頂きたいという想いで制作しました。部屋には、豊臣秀吉の陣羽織・真田信繁の兜・森蘭丸の兜など実在する侍の装身具をアレンジし、表現いたしました。また、鎌倉彫の図案を再構築し描き上げた獅子と鳳凰が、部屋全体を守護する配置で眼を光らせます。
侍の魂「刀」は三橋鎌幽の師である三橋鎌嶺が制作しました。これは、侍の「心技体」が師から弟子に継承されることを伝えるためです、師弟の技が揃ってこそ日本の技であると考えました。一子相伝により綿々と受け継がれる日本の技、私の技術も800年間の長い時を祖先が守り継承してまいりました。これこそ日本の美意識であると感じます。
侍に想いを馳せると共に、侍の生きた時代から継承されている鎌倉彫の技を通し、日本の美意識にも想いを巡らせて下さい。

三橋鎌幽

“日本の美意識が体感できる時空間”

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