田中望さんによるアーティストルーム制作中

上:田中望さん作品

客室が丸ごとアート作品になっている「アーティストルーム」はパークホテル東京のシンボルとしてお客様にご好評をいただいています。全客室がアーティストルームの31階フロアに続き、34階フロアの客室もすべてアーティストルームにする予定です。そして、2023年8月より、34階の第11室目アーティストルーム制作を開始いたしました。
制作するのは、田中望さんです。

制作アーティストルーム

制作:田中望さん
コンセプト(仮):四十八茶百兎(しじゅうはっちゃひゃくうさぎ)
制作開始日:2023年8月14日
制作場所:パークホテル東京34階 3420号室

田中望さんのコメント

江戸時代後期、庶民の間でうまれた色を表す「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)」という言葉をもじったもの。四十八や百は実際の数ではなく、古来の日本では「縁起の良いたくさんの数」として48という数字が用いられた。江戸時代継続的に発令された奢侈禁止令(しゃしきんしれい)は、武士、町人に対し布地の種類から染め色までを指定した。 とりわけ、町人に対して着物地は紬・木綿・麻、染め色も派手な色合いは禁止され、茶色、鼠色はお構いなしの色に限られる厳しい統制がとられた。こうした庶民の華美、贅沢を禁じた幕府の「奢侈禁止令」に対して、江戸の人々は茶や黒、鼠系統の地味な色合いにさまざまな変化をつけて、それぞれの色に、当時人気の歌舞伎役者や風月山水などの名前をとってつけ楽しんだ。許可された色の範疇で、「路考茶(ろこうちゃ)」「団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)」「梅鼠(うめねず)」「鳩羽鼠(はとばねずみ)」など、微妙な染め分けをした新色を続々登場させ、落ち着いた色調の中でも「人とは違う着物」「粋な着物」を追求したところに、日本人の美意識を伺い知ることができるのではないか。
さらに、この奢侈禁止令は、贅沢禁止、文化の統制によって当時庶民の娯楽であった歌舞伎や寄席などにも制限がかけられた。浮世絵も贅沢禁止の対象になり、春画、歌舞伎役者絵、遊女、芸者などの美人画を描くことが禁止された。しかし、江戸時代の絵師たちは禁止令を回避しながら、幕府の統制にたいして皮肉をこめながら作品の制作を続けた。(例:歌川国芳「源頼光公館土蜘作妖怪図」、喜多川歌麿「高名美人六家撰 辰巳路考」、歌川芳艶「猫のせかい」、歌川国芳「猫の百面相」、歌川豊国「工藤左衛門祐経」、藤川貞「妖怪・着飾」、歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」、歌川国芳「亀喜妙々」など)
作者は、このような、江戸の庶民や絵師たちが、幕府に対する、あからさまではない形で、たのしみを見つけながら、反骨精神を潜ませるところには、日本の美意識や、現代のアートに通じる精神を感じる。そこで、室内の壁面いっぱいに、江戸時代の絵師たちが描いたモチーフのオマージュ(兎をモチーフにしたもの)や、四十八茶百鼠の色名からインスピレーションを得た兎の様子などを描き、東京のルーツである江戸の文化・歴史との関わりの中から生じる表現を試みたい。

アーティスト・田中望

1989 宮城県仙台市 うまれ。2017 東北芸術工科大学芸術工学研究科 芸術工学専攻 博士後期課程 修了。東北の風土や民俗学の研究、フィールドワークなどを数多く行いその成果をもとに絵画的に表現する作家。田中の絵画は洛中洛外図屏風と同様、細部をみることから出発し、より大きな全体の意味を読み解くべく作品が多い。インターネットを中心とした瞬間的なイメージの印象が作品の印象の成否を決める現代において田中の作品は非常に時代に逆行しているかもしれない。しかしいったん細部に目を転じれば、描かれた表象、それぞれの意味を理解し得なくとも、田中の絵画には絵巻物を少しずつ紐解くようにして、細部から全体へ、驚きと発見を繰り返しながら見る楽しさがある。古典から現代へ、ローカルから世界へ、目の前にある絵画の背後にある、私たちが現代の視点のなかから読み解くべき寓話としての意味の集積がそこにあり、今始まったばかりの田中の絵画における冒険からは計り知れない期待を感じさせる。

主な個展
-2023 N.E.blood21 田中望個展 (リアスアーク美術館/宮城)
-2022 田中望 -山づと- (アートフロントギャラリー / 東京)
-2017 田中望 -場所と徴候- (アートフロントギャラリー / 東京)
-2016 東北芸術工科大学大学院博士審査展(悠創館ギャラリー/山形)
-2015 田中望展 「潮つ路」(横浜美術館アートギャラリー1・Cafe 小倉山 / 神奈川)

主なグループ展
-2019 アートみやぎ2019(宮城県美術館/宮城)
-「つながる湾プロジェクト 〜文化交流市〜」(塩竈市杉村惇美術館/宮城)
-2018 若手アーティスト支援プログラムVoyage「氏家昂大・田中望展 土のみち 土のさち」
杉村惇美術館/宮城)
-越後妻有 冬「SNOWART」(松代・農舞台/

メディア関係者様

制作中の取材や、また31階34階の既存のアーティストルームへの取材も承ります。お気軽にお問い合わせください。
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